ひがっしーを強く抱きしめないで!キツツキと心臓の「1/4の秘密」|にじいろファミリークリニック|東村山市久米川町の内科・循環器内科・泌尿器科

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ひがっしーを強く抱きしめないで!キツツキと心臓の「1/4の秘密」

ひがっしーを強く抱きしめないで!キツツキと心臓の「1/4の秘密」|にじいろファミリークリニック|東村山市久米川町の内科・循環器内科・泌尿器科

2026年10月13日

ひがっしーを強く抱きしめないで!キツツキと心臓の「1/4の秘密」

こんにちは。にじいろファミリークリニック、安田です。

当院は東村山市にあります。各市に公式キャラクターとしてゆるキャラが存在するのが現代では常となっておりますが、東村山市の公式キャラクターはケヤキの木の妖精である「ひがっしー」くんです。全体的にみどり色で、羽が生えていてエヘヘと笑っているような顔をしています。どうやら公式プロフィールなるものが存在し、彼の夢は「みんなを笑顔にするような立派なケヤキになること」だそうです。「立派なケヤキの木」が「みんなを笑顔にする」というのが、公園とかのシンボルツリーとなる事なのか、はたまた家具や工芸品等へ加工される事なのか、という点は難しい所ではありますが、なんにせよ夢実現に向けて頑張っていただければと感じます。

このケヤキの木をコツコツと叩くのはコゲラという鳥で、これはキツツキの一種です。東村山市のお隣である小平市のキャラクターは「こげらん」というコゲラをモチーフにしたゆるキャラなわけですから、これはちょっとひがしー親衛隊としては問題が起きぬように重々見守る必要があるようです。

「キツツキってどうして脳震盪にならないの?」って、皆さん思いますよね。「別に・・」という方も、胸に手を当てて考え直してください。“あなたはキツツキがなぜ脳震盪にならないのか、気になってく~る~”。するとアラ不思議、気になってくるわけです。

答えですが、キツツキっていうのは木を突く瞬間、いざつつくぞっていう直前のほんの一瞬だけ首の血管がギュッと締まるんですよ。その血管っていうのも脳の帰り道になる血管が締まりますんで、脳の血液とか髄液(脳の周りに流れる液体です)が一瞬だけパンパンになるんです。これが脳をがっちりと固定して、つつく衝撃にもエアバックのように作用するので、キツツキは脳震盪にならないんですね。ほら、これでキツツキを見たときに出来る話が一つ増えましたね。

脳と心臓の間で血液の流れが影響しあうっていうのはよくある話で、例えばお腹の中にいる赤ちゃんは、まだ肺がペシャンコに潰れておりますので、心臓が肺へ血液を送ろうとすると、凄まじい血管抵抗(圧力)がかかってしまいます。これで無理に血液を送ろうとすれば心臓のポンプが壊れたり、高すぎる圧力が脳へダイレクトに伝わって脳出血を起こしちゃいます。ですので、赤ちゃんの心臓の真ん中には卵円孔という血液のバイパス用バルブがあり、このバルブを全開にしておく事で高すぎる圧力を逃がし、優しい血流を脳へ送っています。まあ、そもそもお腹の赤ちゃんは”ヘソ呼吸”ですから血液が肺に流れる必要もさほど無い訳です。

この卵円孔、本来は赤ちゃんが産声をあげて最初の呼吸をした瞬間、肺が一気に膨らんで心臓内の圧力がガラリと変わったその時、卵円孔にあるパタパタした扉が圧力差によってバタン!と閉まる仕組みになっています。扉が閉まってしまえば数ヶ月かけて完全に接着して閉じてしまいます。しかし、人類の約4人に1人は、扉がただ閉まっているだけで、接着されずにいつでも開く状態(開存)のまま大人になっています。

この卵円孔の最初の発見者は、あのレオナルド・ダ・ヴィンチです。今から500年以上前のルネサンス期、当時は人間の解剖っていうのは宗教的にタブーだったんですが、ダ・ヴィンチは夜な夜な、薄暗いロウソクの光の中で死体を解剖し、極めて精密なスケッチを残していました(ちょっと怖い話な感じですね)。1513年、彼はある心臓のスケッチの横に、「右の部屋から左の部屋へ貫通するチャンネル(穴)を見つけた。他の心臓にもこれがあるのか、注意して見てみよう」。とメモを残しており、これが、卵円孔に関する人類最初の記録です。

大人の4人に1人が持っているこの穴は長らく「無害な個人の特徴」程度に考えられていたのですが、1877年のドイツの病理学者ユリウス・フリードリヒ・コーンハイム先生はこの考えへ300年越しの一石を投じました。

彼は足の静脈で血液が固まり、それが原因で脳梗塞となり亡くなった35歳女性の体を解剖していました。ただ、実際足の静脈内の血の塊は心臓の右側を通って必ず肺に引っかかります。この肺のフィルターを通過して心臓の左側とつながっている脳に行く事など解剖学的に不可能でしたので、この女性の脳梗塞の原因は解剖前まで謎につつまれていました。私たちと同様、不思議に思ったコーンハイム先生は女性の体をくまなく調べ、いよいよ心臓を調べたのですが、するとそこには「大人の指が3本も余裕で通るほどの、巨大に開いた卵円孔」があったのです。つまり、足から解き放たれた血の塊は、肺を完全にスルーして、この穴から心臓の右側から左側への移動し、最終的に脳へと到達していたのです。これが、医学界に激震を与えた「奇異性脳塞栓症(パラドキシカル・エンボリズム)」の発見の瞬間でした。

コーンハイム先生の発見は偉大なものでしたが、卵円孔が見つかったとて「血液をサラサラにする薬を飲む」くらいしか長らく手はありませんでした。しかし2000年代以降、医療テクノロジーは信じられない進化を遂げ、胸を切り開かなくても、太ももの血管からカテーテルを入れ、心臓の内側から「小さな日傘」のような形状記憶合金のデバイスをパッと広げて穴をサンドイッチする治療が世界中で標準化されました。ロウソクで照らされる暗闇で「おや、穴があるぞ」と見つけてから500年、赤ちゃん時代の消し忘れがこんなにスマートな方法で治療されるようになるとはダ・ヴィンチでも想像できなかったでしょう。

キツツキには卵円孔はありませんが、私たちは1/4程度の確率で卵円孔が開いたままです。卵円孔が開いたままの人がキツツキと同じように「フンッ!」と力を入れる(医学用語で「バルサルバ効果」と言います)と、胸の圧力が一気に高まり、普段は閉まっている卵円孔のフタが「バカッ!」と開く事があります。すると、本来なら肺のフィルターでキャッチされるはずだった小さな血の塊は、奇異性脳塞栓症を起こしてしまうかもしれません。ひがっしーを見ても、私たちは優しくハグする程度にしておくのが、無難かと思われます。

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