サルモネラって2500種類おんねん。|にじいろファミリークリニック|東村山市久米川町の内科・循環器内科・泌尿器科

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サルモネラって2500種類おんねん。

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2026年9月08日

サルモネラって2500種類おんねん。

こんにちは。にじいろファミリークリニック、安田です。

最近、ニュースで食中毒の事件が取り上げられていました。納涼祭で提供された冷製ラーメンによるものであったそうで、腹痛や発熱といった症状に見舞われたとのことです。

この食中毒っていうのは、細菌とかウイルスのほか、化学物質とか毒素などが含まれた食べ物を食べたせいで腹痛とか下痢などの症状を起こす健康被害の総称です。なので、例えば農薬がたくさんついた食べ物でお腹がグルグルしても、これは厳密には化学薬品中毒ではありますが、一応は”食中毒”といって言いワケです。

この食中毒の原因として代表的な菌に「サルモネラ菌」がおり、今回私が見たニュースではこのサルモネラ菌が脚光を浴びていたわけです。「ああ、トランスポゾンで薬剤耐性になるアレね」って、医学生時代の授業を思い出させてくれるこのサルモネラ菌の話をしようと思います。

サルモネラは英語で”Salmonella”って書きます。でですね、Salmon-ellaって感じで分解するんですが、このellaっていうのはラテン語で「~ちゃん」みたいな感じの意味の言葉です。科学界で細菌や藻類などの学名をつけるときに、「~にちなんだもの」という形でよく使われるので、そうすると「サルモネラ」=「Salmonにちなんだもの」となります。

このせいで、特に海外では「サーモンにいる菌なのか!」って誤解をうけてますし、サーモン側から見たらすんごい濡れ衣です。事実としては、発見した先生の名前がダニエル・エルマー・サルモン(Daniel Elmer Salmon)でしたので、Salmon-ella→サルモネラとなったわけで、私が発見していれば「ヤスダネラ」って呼んでたかもしれません。ちなみに、本当にサルモネラ菌をみつけたのは弟子のスミス先生でしたが、論文はサルモン先生の名前で書かれており、現在の命名につながっています。

本当の発見者である部下のスミス先生は、自分の見つけた菌に上司の名前がつけられたとき、一体どんな顔をしたんですかね。科学界の切ない上下関係が、この名前に刻まれています。私は心の中で「スミスネラ」と呼ばせていただきましょう。

こんな涙ぐましいスミスネラ・・。わかりにくいのでやっぱりサルモネラと呼びましょう。ごめんスミス先生。

こんな涙ぐましいサルモネラ菌ですが、これは菌のグループの名前であり、このグループには2500種類以上の仲間(血清型)がいます。この膨大な仲間たちには、「チフス」と呼ばれる超凶悪なものも含まれています。

一般的な食中毒の原因になるのは普通のサルモネラ菌で、これはニワトリですとか牛、豚、あとはカメとか犬とか、人間以外の動物の中でも生きていける奴等です。なので、動物の肉とかフンから人間の口に入って、食中毒を起こしたりします。一方、チフス菌は人間以外の動物には絶対に感染しません。ですので、「感染した人間のフンや尿」から、手洗いの不足などを経て、巡り巡って他の人間の口に入ることでしか感染が広がらないんですね。

チフスは古くから人間の生活に大きな影響を与えてきた菌であり、紀元前430年頃に起きた「アテナイの疫病」(当時世界最強だった古代ギリシャのアテナイで突如謎の疫病が蔓延し、人口の3分の1が死亡して国家が衰退へと向かった大流行病です)も、近年の研究でチフスが要因であった事が分かりました。古代遺跡から発掘された遺体の歯からDNAを抽出して調べたところ、チフス菌の痕跡が発見されたんです。

一般的な食中毒の原因となるサルモネラ菌に関しては、主には生の鶏卵ですとか、お肉や卵の菌が、まな板や手を介して移った魚(二次汚染と言います)などの摂取が問題となります。サルモネラは熱には弱いんですが乾燥にも強く、じゅうたんとかホコリの中でも数週間くらいなら生きていけます。あと冷蔵庫の中でも死んだりしません。

だいたい20℃〜37℃くらいの“ぬるい温度”になると爆発的に増殖して、20分で2倍、1時間で8倍、2時間で64倍というスピードで増えます。つまり、割った卵とかを外に出しっぱなしにしておけば、数時間もすれば食中毒を起こす事くらい簡単な量まで増えるんですね。

乾燥に強いという特徴をもつサルモネラは、チョコレートの中でも生きていけます。しかも良くない事に、チョコレートって油分があるので、チョコレートの中の菌は油コーティングのおかげで胃酸からの攻撃を防ぐ事が可能です。ですので、チョコレートに混入したサルモネラ菌っていうのは、たった数個〜数十個という微量であっても、食中毒を発症させる事が出来ます。これは、2022年の春、イースターの時期にベルギーのチョコレート工場で本当に起こった集団食中毒事件の原因です。油でテカテカのサルモネラ菌が胃酸の雨の中で「フフフ」と笑っている姿を想像すると、非常に不愉快な気持ちになりますので、皆さんはやらないようにして下さい。

細菌による食中毒っていうのは細菌そのものが原因である「感染型」と、細菌が発生させた毒素による「毒素型」に分けられるのですが、サルモネラ菌による食中毒は「感染型」です。ですので、サルモネラ菌が生きたまま腸にたどり着いて、そこで増殖してから腸の内側から炎症を起こします。サルモネラにとって人の体温(36℃〜37℃)ってかなり快適なんです。

感染型食中毒には「菌さえ殺してしまえば、絶対に食中毒は起きない」っていう明確な弱点があります。ですので、食べる前に「熱」で全滅させるという行為が極めて効果的で、食品の中心部まで75℃で1分間以上加熱すれば、菌は完全に死滅しちゃいます。ただ、菌が少々のこっていて、これが胃酸のバリアをかいくぐってしまうと、食中毒を発症します。

つまるところ、手洗い清潔は当然ですが、よく加熱して、作ったら放置せずにすぐに食べましょうって事です。

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