運動・プリン体ゼロのお酒・果物。痛風の犯人は誰か。|にじいろファミリークリニック|東村山市久米川町の内科・循環器内科・泌尿器科

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運動・プリン体ゼロのお酒・果物。痛風の犯人は誰か。

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2026年3月03日

運動・プリン体ゼロのお酒・果物。痛風の犯人は誰か。

こんにちは。にじいろファミリークリニック、安田です。

痛風という病気があります。痛風とは、尿酸値が高い方などで発症する事がある急性関節炎を指します。古代ギリシャで医学の父でおなじみのヒポクラテスが、「風が吹いても痛む病気」と表現したらしく、それが由来で「痛風」と言われています。

「いや、ヒポクラテスは日本語をしゃべるんかいな!」と思われると思いますが、あくまで病状の表現として”風が吹いても痛む“とされただけであり、実際は「ポダグラ」と言われていました。ギリシャ語で「足」を「podos;ポドス」、「罠にかかる」を「agra;アグラ」と言いますので、「足が獣をとらえる罠にかかったように痛む病気」という意味で「Podagra;ポダグラ」と命名されたという事です。

痛風になった著名人としてはアレキサンダー大王やレオナルドダヴィンチ、ゲーテやニュートンなどが挙げられ、欧米ではだいぶメジャーな病気だったのですが、明治時代頃までの日本ではかなり稀でした。明治初期に日本に来ていたドイツ人医師のエルヴィン・フォン・ベルツ先生は「日本には痛風がない!」と驚きの報告をしています。しかし、食文化の変遷に合わせて1898年には日本ではじめて痛風の患者が発見され、以降は徐々に増えて現在に至りました。

尿酸は100mlの血液に対してだいたい7mgくらいまでしか溶ける事が出来ませんので、この濃度を超えると溶けきれない尿酸が結晶になってしまい、この結晶は体内では異物とみなされて攻撃されます。この攻撃が炎症反応とよばれる痛みの正体ですので、尿酸結晶が関節にたまると痛風発作の原因となるのです。

痛風には尿酸が関係するのですが、尿酸は「プリン体」という物質が分解される事でできるので、痛風の原因はプリン体であると言い換える事も出来ます。この「プリン体」が良くないものであると知る年齢って、結構若いですよね。だから、おやつに食べていたプリンが、なぜ関節炎を起こすのか、一定数の人は疑問に思うわけです。しかし実際のところ両者は無関係であり、おやつのプリンは蒸し料理という意味の「プディング」から来ており、プリン体は「プリンヌクレオチド」という化合物から来ているのです。プリンヌクレオチドはプリン環というカクカクした化学的骨格を持っている、塩基と呼ばれる物質です。ぷっちん業界的に言えば、少なからず風評被害をうけているのかもしれません。

尿酸は主に肝臓で作られる物質です。肝臓をもつ動物はたくさんいるので、尿酸を体内に持つ動物も当然たくさんいるのですが、他の動物は「ウリカーゼ」という酵素を用いて尿酸を分解できてしまいます。ですが人間や猿などはウリカーゼを持っていませんので、尿酸がたまりやすくなってしまいました。この理由はまだよくわかっていません。尿酸には抗酸化作用と呼ばれる解毒作用があり、脳神経や血管を守る働きもあります。同じようにビタミンCも抗酸化作用があるのですが、私たちの先祖は4000万年前くらいにビタミンCを作る酵素を失ってしまったので、この作用を担うために尿酸を分解しなくなったという説が唱えられており、少なくとも動物性たんぱく質を十分にとることが出来なかった太古のご先祖様たちにとっては、長生き物質であったという事になります。

同じようにウリカーゼを持たない動物に鳥がいます。なので、当然のように鳥も痛風になります。鳥の尿酸は白い固形物としてフンになります。人でも腎臓の機能と尿酸には深い関係がありますが、鳥でも痛風発症時にはすでに腎臓病になっている事が多く、愛鳥家さん達は注意が必要です。

尿酸値は7mg/dlを超える状態の事を指しますが、尿酸値7mg/dlに比べると8mg/dlではリスク2倍、9mg/dlではリスク10倍と、ガツガツ増えていきます。尿酸はビールをたくさん飲むような「生活習慣」が問題で高くなるイメージもあると思いますが、体質に由来する面も少なくなく、尿酸を体外へ排出する力が弱い人でも尿酸値が上昇してしまいます。ですので、ビールを飲まない瘦せ型の人でも高いときは高い、という事です。他にも、家族に痛風経験者がいる人では痛風発症のリスクが30~70%程度高いとされていますので、つまりは遺伝的な側面があるのです。

スーパーで手に取るお酒にも「プリン体ゼロ」という記載をよく目にします。でもですね、そもそもアルコールの分解によって乳酸値が上昇すると、腎臓の尿酸排泄機能が低下するので、尿酸値が上昇してしまいます。結局、すべてのアルコールに尿酸値上昇の作用があるという事なので、あの「プリン体ゼロ」という言葉には信用なりません。また、果物に含まれる糖分も、分解する過程で尿酸値の上昇を起こしてしまいます(果糖を分解するとATPと呼ばれるエネルギー物質が消費されるのですが、このATPが分解されると尿酸に生まれ変わってしまいます)。「ウイスキーにはプリン体がないんだよ~」と言いながら果物ジュースで割って飲みまくろうものなら、それは痛風予防でもなんでもない、という事ですね。

過度な運動も尿酸値が上昇する要因として有名で、ボディービルダーにも痛風が多いと言われています。ジムで過酷な運動をしてからウイスキーのジュース割りをガブ飲みしちゃうような人がいれば、もうそれは痛風になろうとしているといっても過言ではないのです。

何事もほどほどに、適度な運動・適度な食事が健康の秘訣という事ですが、尿酸値が高い人の適切な行動は病院受診なのかもしれません。

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