「ブツブツ・のど痛・爪ぽろり病」という代案|にじいろファミリークリニック|東村山市久米川町の内科・循環器内科・泌尿器科

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「ブツブツ・のど痛・爪ぽろり病」という代案

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2026年7月28日

「ブツブツ・のど痛・爪ぽろり病」という代案

こんにちは。にじいろファミリークリニック、安田です。

手足口病が増えていますね。直近(2026年7月下旬現在)では、全国35都府県で「警報レベル」を超える大流行であり、この規模の流行は2年ぶりです。

ある地域で指定された医療機関において、1週間に対象となる患者が平均5人以上受診すると、「定点あたり5人以上」という定義を満たし、「警報レベル」に達する事となります。このおかげで、「どの程度流行しているのか」という事を数字で理解する事ができるようになっております。ちなみに、2026年第27週:7月19日の確定データでは東村山市が属する「多摩小平保健所」管内の手足口病の報告数が定点あたり20.60人となっています。これは国の定める警報基準値の4倍以上という事になるので、大爆発的な流行をしているわけです。いやはや、数字にすると分かりやすいですね。

この手足口病ですが、昨今の猛暑とのダブルパンチで脱水症状が問題になっています。この病気では口内炎が出来るのですが、これが痛むので子供が水分や食事をちゃんととってくれなくなります。ここに暑さが加わるので、あっという間に脱水症になってしまうんですね。ですので、手足口病による子供の入院理由は圧倒的に「脱水症」です。

手足口病の正式な発見は意外にも最近の事で、1957年になります。当然それ以前からあったんですが、なんだかんだスルーされてきました。というのも、昔は天然痘とか麻疹とかコレラ・結核とか、「かかったら死んでしまうようなヤバめの感染症」というのがそこら中にあったんです。そうすると、「ちょっと手足に水ぶくれが出来て数日で自然に治る」的な夏風邪は「これは、あせもですね」とか「う~ん、虫刺されでしょうな」的な適当な感じで片付けられていたわけです。当然、ウイルスを認識できないという科学力の限界も関係していました。

ですが、40年代後半〜1950年代にかけて、世界で初めてウイルスの培養技術とともに顕微鏡を超えた「電子顕微鏡」が普及し始めました。この電子顕微鏡は当時の微生物・ウイルス学者が大興奮するくらいちっちゃいものが見える機械で、「うそ~ん、こんなウイルスが原因だったの~!?」みたいな発見がたくさん出来るようになりました。この機械のおかげで、ただのあせもだと思っていたブツブツの中に新種のウイルスがいるという事が判明し、手足口病は発見される事になりました。

手足口病が歴史上、初めてちゃんと確認されたのは1957年のことです。この年の夏にカナダのトロントで流行した夏風邪の症状は「熱が出てひどい口内炎が出来る」という物でした。これらは「ヘルパンギーナ」と呼ばれる感染症でも見られる症状なんですが、患者さん達は手のひらや足の裏にも水ぶくれがあったのです。当時は手足のブツブツができる病気としては水疱瘡くらいしかわかってなかったので、この病気は「ヘルパンギーナっぽいんだけど手とか足にブツブツができる謎の風邪」という扱いをうけました。

同時期、反対側の南半球にあるニュージーランドのセドンという小さな町でも、全く同じ「手・足・口にブツブツができる奇妙な病気」が流行しており、これはなんかあるぞ!という事で患者であった子供達の喉や便からウイルス培養を行って「コクサッキーウイルスA16型」という新種ウイルスの発見に成功しました。

培養による間接的な証明は「本当にブツブツにウイルスいるの?」という疑問を残す事になりましたが、電子顕微鏡の力で手足口病患者の水ぶくれの中に潜む20~30ナノメートルという超小型の正20面体ウイルス粒子をカメラに収める事に成功し、これらの症状がウイルス感染であった事が決定的となったんです。

「なんか、もうちょっとひねれたでしょ?」とは私も思うのですが、ようやく発見されたこの病気は「Hand, foot, and mouth disease」と名付けられました。そして、当時の日本のお医者さん達も、これを直訳して「『手足口病』でいいんじゃない?」という感じで呼び始めたので、現在もこの呼び名となっています。ウイルスの難しい学名よりも、一般の人やお医者さんが一目で「あの病気だ!」と理解できる実用的な名前が必要であるという理念が根底にあるようです。

手足口病のウイルスは一時的に爪を作る細胞の働きを止めてしまいます。すると、中身スカスカな爪が出来るのですが、これは下からキレイな爪が生えてくるとポロって抜けてしまいます。ですので、熱やブツブツがすっかり治った1~2か月後に急に爪が剥がれ落ちるのです。ちょっとホラーな「爪甲脱落症」というこの症状は何の心配もありません。ここまで加味して、「手足口および後から爪ぽろり病」っていう病名でもよかったのかもしれませんね。

はじめて見つかったウイルスはコクサッキーウイルスA16型でしたが、手足口病の原因ウイルスはコクサッキーウイルスの他の型やエンテロウイルス等、複数あります。なので、今年はコクサッキーA16型が流行して来年はエンテロ71型が流行して、みたいな感じで「流行のスタメン」が入れ替わります。私たちは同じような事をインフルエンザで経験しているので理解が難しくもありませんが、「去年かかったからもう安心」とかいう事はなく、違う型が流行ればワンシーズンに2回以上かかる人も全然おります。特に2000年前後に流行した「エンテロウイルス71型」による手足口病では脳炎や髄膜炎といった重篤な合併症を起こすケースが相次いで問題になりました。

手足口病のウイルスは、熱やブツブツが完全に治った後でも、便から1ヶ月くらいの間は排出され続けますので、「え!?、今うつるの?」的なタイミングでうつったり、タオルの共用とかが施設内感染を広げる原因となったりします。

今年の夏は良く手を洗って、自分のハンカチで手をふきましょう。

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