血圧管理は時代の常識|にじいろファミリークリニック|東村山市久米川町の内科・循環器内科・泌尿器科

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血圧管理は時代の常識

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2026年7月07日

血圧管理は時代の常識

こんにちは。にじいろファミリークリニック、安田です。

「高血圧」という病気があります。高血圧で受診される方は非常に多くおられますが、大部分の方が「健康診断で指摘された」という形でご相談いただきます。こういった早期指摘ってすごく価値があるので、高血圧を指摘してくれている先生に対し、「よくぞ指摘してくださいました!」と思っております。いつもありがとうございます。

高血圧に関してコラムを書くのは実は初めてではありません。そもそも高血圧なんてものを循環器内科に語らせたら最後、カップラーメンの麺は伸びきり、終電には間に合わず、耳にタコ・目にクマをかかえて帰る事になります。ですので、今回は一段階深めた部分のみを、さらに”かいつまんで”書いていきます。

まず第一に、高血圧なんてものはほとんど自覚症状が出ません。確かに、血圧180mmHg以上で頭痛・息切れが出るような「高血圧緊急症」とかいう病名が存在するのは事実ですが、「頭痛・息切れによるストレス反応として血圧が上昇している」といった具合で、原因ではなく結果として高血圧を伴っているケースがすっごく多いです。実際問題、180mmHg~220mmHg程度の高血圧を伴いながら全くの無症状である「高血圧切迫症」という病状がある事からも分かるように、一部の特殊例を除けば純粋に高血圧による症状を捉える事は至極難しいのです。高血圧による症状を疑う場面では、だいたい既に高血圧による臓器障害を伴い、この臓器障害の症状を見ている事が多いんです。

だから、「症状がないから血圧はこの程度で良い」などという解釈は非科学的なんです。

20世紀前半まで、血圧は高いまま放置しても良いのだ、という考え方が本当に一般的でした。当時は「科学的根拠に基づかない思い込みのまま実施される医療」というものが存在し、血圧はその対象であったからです。「加齢に伴って血管が硬く・狭くなるため、その分血液をしっかり流しきるために血圧が上昇しているのだ」という考え方が主流だったんですね。

米国心臓協会の創設者で「アメリカ心臓病学の父」と称されるP. D. ホワイト博士も、1937年に、「高血圧は臓器に血液を巡らせるための重要な代償機構かもしれないため、コントロールできる確証があったとしても、手を出すべきではない」という言葉を残しています。「血圧が高いだけの無症状患者に対して下手に血圧を下げる薬を飲ませたら、脳や心臓に血液がいかなくなってしまうので、血圧を下げる治療をする奴はどうかしている」と、当時は思われていた訳です。

ながらく常識のふりをしていた「血圧は下げずとも良い」という非常識は、フランクリン・ルーズベルト大統領の死から見直される事になりました。ニューディール政策によって世界恐慌から脱却を図り、第二次世界大戦における連合国の勝利を牽引した歴史的リーダーであったルーズベルト大統領の血圧は晩年200~300mmHgに達しており、1945年4月12日、ジョージア州の別荘で突然発症した脳出血により63歳でこの世を去りました。

「最高水準医療を受けられるはずの大統領すら救えない、この恐ろしい病気の正体を突き止めなければならない」という強烈な危機感が米国を覆い、後にアメリカ国立心臓研究所が設立されました。面白い事に、国家機関のトップに就いたのは、あのP. D. ホワイト博士です。ホワイト博士はルーズベルトの死という教訓を無駄にしないため、前代未聞の長期追跡調査を強力に推し進めました。これがフラミンガム研究です。

そしてついに、「加齢による不可避の現象」と考えられていた脳卒中や心疾患が、「日常の生活習慣や生体データと深く結びついている」ことが証明され、人類は「血圧が高いほど脳卒中や心不全のリスクが跳ね上がる」という事実を知る事になりました。

ここからは多くの治療薬が登場し、治療の選択肢が爆発的に増えました。1970年代には米国合同委員会で初めての高血圧ガイドラインが策定され、1990年代に世界保健機関(WHO)と国際高血圧学会(ISH)が共同でガイドラインを策定し、高血圧管理が標準化されてきました。日本では2000年に初の「日本高血圧学会(JSH)高血圧治療ガイドライン」が発行されました。

医療は常に進化を続ける未完成の科学です。このため、どの分野の医療ガイドラインも大規模データをもとに数年ごとの改定・変遷といったアップデートが必要になります。高血圧に関するガイドラインも、先述の2000年に誕生したのちに2004年、2014年、2019年に内容が変更され、家庭血圧を中心に高血圧管理が強化されるようになってきました。

そして2025年です。これまで75歳以上の方の74歳以下の方で血圧の管理目標は異なっており、高齢者における血圧は緩く管理しても良いという常識がありました。しかし2025年の改定では、最新エビデンスに基づき年齢や持病を問わず、原則として全員「130/80mmHg未満(家庭血圧では125/75mmHg未満)」へと管理目標が統一されました。ガイドラインも、「高血圧治療ガイドライ」であったものが、「高血圧管理・治療ガイドライン」に変更された事から分かるように、”治療”から”管理”へとシフト変更され、「高血圧を治療する」という動きから、「血圧を管理して合併症を予防していく」という動きへと変わったのです。

血圧管理とは数字のみを見る医療ではありません。高値血圧からⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度までの4つに血圧を分類し、ここに危険因子・既往症を考慮して低・中等度・高リスクの3クラスにリスク層別化を行って、ここから初めて管理を開始します。中等度リスク・高リスク群では初期から早期薬物治療の開始が推奨されており、低リスクでも生活習慣改善による経過観察は最長1カ月以内で、早期薬物治療介入の判断が推奨されています。血圧管理は感覚で行うものではありません。

膨大な科学データの積み重ねが、現代医療です。皆さん、是非とも”今の医学”をうけてください。血圧管理は感覚で行うものではありません。「症状がなく血圧が高いだけ」は「予防できる部分がたんまりとある」という事です。困っていなければ困っていないほど、血圧管理の真価は上がっていくのです。

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