2026年6月23日

こんにちは。にじいろファミリークリニック安田です。
もうだいぶ夏っぽい気候です。皆様どのようにお過ごしでしょうか。当院は副院長が泌尿器科医ですので、夏に膀胱炎が爆発的に増加する事を肌で感じる事が出来る昨今でございます。
やはりアレですね、やっぱり汗をかく影響で体の水分が奪われて、結果的に尿が濃縮して量が減りますので、本来なら尿で一緒に洗い流されるはずと雑菌が膀胱内に留まりやすくなっちゃうからですね。あとは高温多湿な環境ではデリケートゾーンにも雑菌が繁殖しやすくなりますし、この時期は特に女性に気を付けてほしいっていう事になります。
膀胱炎以外にも女性を中心とした泌尿器科的問題って少なくありません。尿漏れや骨盤臓器脱っていう病気も、中心にいるのは女性だったりします。ですので、泌尿器科(Urology:ウロロジー)と産婦人科(Gynecology:ギネコロジー)の境界にある疾患を専門に扱う分野が当然必要であり、正式にこの領域を「ウロギネコロジー(女性泌尿器科・骨盤底外科)」と呼び、すでに確立されているんです。
医療機関では泌尿器科の事を略して「ウロ」と呼びますし、産婦人科の事を「ギネ」って呼ぶので、女性泌尿器科・骨盤底外科の事を「ウロギネ」って呼んでます。女性は妊娠・出産、加齢、閉経などによって、骨盤の底にある筋肉や靭帯(骨盤底筋群)がダメージを受けやすいので、こういった問題で生じるような女性特有の悩みへ対し、垣根を越えた総合的治療を行うためにウロギネがある、という事です。
尿漏れとか骨盤臓器脱(子宮や膀胱の位置が下がってきてしまう病気です)っていうのは、我々人類が誕生して以来多くの女性を苦しめてきた病気です。古代エジプトのパピルスにも子宮脱の記述がありますが原因までは分かっておらず、「子宮は体の中を自由に動き回る生き物だ」と考えられていた様で、「お香の煙で燻す」などの魔術的な治療が行われたりしていました。古代ギリシャではヒポクラテスが膣にザクロを挿入する事で治療をしていたのですが、コレは現代のペッサリーと呼ばれるリング状の器具を膣内にいれて支える手法の先駆けでした。
徐々に近代医学が発展すると「女性の骨盤底(お腹の底)のトラブルはどの診療科が診るべきであるのか」という事に関してウロとギネでの縄張り争いが始まりました。嘘みたいな本当の話として有名なのが、「尿管カテーテル挿入勝負」です。アメリカ医学の聖地であるジョンス・ホプキンス病院で1900年に行われた公開手術では近代産婦人科の父と呼ばれるハワード・ケリー先生(女性の尿漏れ手術である「ケリー縫縮術」の開発者です) と、アメリカ泌尿器科の父と呼ばれたヒュー・ヤング先生による尿管カテーテル挿入勝負が行われました。左右の腎臓から膀胱までつながる尿管と呼ばれる場所へカテーテルという細い管を通すのですが、両者とも3分というすさまじい速度で成功させました。これは、”安全・迅速に行える手術手技の証明”という点では結構かと思いますが、「尿のトラブルはウロ」、「骨盤のトラブルはギネ」というライバル関係を確立させてしまうので、両者の症状を同時に起こしやすい女性の患者さん達は適切な治療を受けにくくなってしまいました。
しかし1914年からの第一次世界大戦が始まると状況は変わっていきました。男性が戦場へ行き、女性が工場などで重労働を担うようになりましたので、腹圧で悪化する尿漏れや子宮脱が爆増したんです。「働かなきゃいけないのに、これじゃあ生活が成り立たない!」という悲痛の叫びが大きくなり、ようやく医学界も本気で「女性の骨盤底に特化した治療」を模索し始めました。 そしていよいよ1970年代に入り、「診療科の垣根を無くして女性の骨盤底をトータルケアしよう」という動きが本格化し、この頃にはアメリカや欧州で専門の学会(国際ウロギネコロジー協会:IUGAなど)が設立され、「ウロギネコロジー」という言葉が医療界における世界共通語となりました。
治療法はどんどん進化しています。下がって来た子宮や膀胱へ対する治療として、これまではハンモックのようなメッシュを用いた手術が一般的でしたが、最近ではメッシュを体内に入れずに手術支援ロボットを使ってお腹の中から吊り上げる「ロボット支援下仙骨膣固定術(RSC)」が普及してきています。過活動膀胱へ対しても膀胱の異常収縮を抑えるボトックス注射も行われるようになりました。
また、尿漏れや骨盤底筋の緩みに対しては膣の中から特殊なレーザーを照射し、コラーゲンを再生させて組織を引き締める”ウロギネレーザー治療“が登場し、服を着たまま特殊な椅子に座るだけで、磁気によって骨盤底筋を効率よく鍛える “スターフォーマー”なども使用が可能になってきましたし、特にスターフォーマーは手軽さと有効性/効率面で幅広い年齢層の方に実施が出来る手法として注目されています。
以前は「命に関わらないから」と後回しにされがちだったウロギネ領域でしたが、現代では「自分らしく動ける人生を維持するための最重要医療」として認識されており、治療技術も大きく進歩し続けています。最新医療によって劇的な低侵襲化(体に優しい治療)が進み、「高齢だから仕方ない」と諦められがちだった患者さん達へも治療が可能になりました。いつだって困ったら相談してくれれば良いのです。
「尿漏れや子宮脱、いつウロギネに相談するの? \今でしょ!!!/」