阻止せよ、背中ホームラン|にじいろファミリークリニック|東村山市久米川町の内科・循環器内科・泌尿器科

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阻止せよ、背中ホームラン

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2026年2月17日

阻止せよ、背中ホームラン

こんにちは。にじいろファミリークリニック、安田です。

尿路結石という病名をご存じでしょうか。

尿路とは、言葉のごとく「尿の通り道」です。尿は腎臓でつくられ、尿が体外へ出ていく出口を外尿道口とよびますので、腎臓から外尿道口までの過程で石のような結晶が出来てしまう病気の事を尿路結石と言います。

このうち、腎臓~尿管までを上部尿路、膀胱~外尿道口までの下部尿路と言いますので、それぞれの部位でつくられる結石を上部尿路結石(腎結石・尿管結石)、下部尿路結石と呼びます。このうち上部尿路結石が全体の96%程度を占めています。個人的な意見ではありますが、尿路結石と言えば、ほとんどの場面で尿管結石を指しているような印象です。

私は今まで、「大動脈解離(体内の大きな血管が裂けていってしまう病気)」とか、「大動脈瘤切迫破裂(体内の大きな血管が膨らみ、破けかけてしまう病気)」とか、「心筋梗塞(心臓の血管がつまってしまう事で心臓組織が壊死してしまう病気)」の患者さんを対応してきましたが、尿路結石はこれらを凌駕するような痛みで受診されるケースがしばしばあり、「背中をバットでフルスイングされるような痛み」という有名な表現があったりします。これは、大谷翔平か少年野球団か、というレベルの話ではありません。たとえバッターがリトルリーグ選手であったとしても、フルスイングであれば大打撃なわけです。

恐ろしき尿路結石の形成過程は、塩の結晶をつくる自由研究に似たメカニズムとなっています。食塩水の中に糸を垂らし、ゆっくりと水が蒸発すると塩が宝石のような結晶になって糸にくっついていくという実験で、やったことがある人もいるかもしれません。尿は老廃物を溶かして捨てるための液体ですので、この中の「結石の成分が増えすぎる」、あるいは「溶かすための水分が減り過ぎる」のいずれかがあると結石はできてしまうワケです。

尿路結石の成分はシュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石、尿酸結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石、シスチン結石などがあります。名前を見れば、何でできているか一目瞭然という、とってもやさしい名づけ方です。このうち、シスチン結石は遺伝性の病気で見られるもので、頻度は稀です。

ここで、「さて、どの結石が一番多いでしょうか?」という質問をすると、意外にも「尿酸結石!」という答えが返ってくる事が多いのです。意外というのは、当然私個人の見解ですが、やっぱり「尿酸」というワードは世間一般的に浸透しているのだな、と感じます。

実際、尿酸結石は全体の10%程度で、一番多いのはシュウ酸カルシウム結石です。これは日本人の尿路結石において脅威の80%を占めています。つまり、ひとまずはシュウ酸カルシウム結石の予防が出来れば、あの「背中バット」の恐怖から逃れられそう、と言って良いわけです。

予防策とはズバリ「水分摂取で溶かす水分を増やし、結石成分が減ればよい」という事になります。水分摂取という点で「よっしゃ、ビールや!」となる人は、尿酸結石の存在を思い出して、ぐっとこらえてください。プリン体は尿酸になります。

主に緑茶やコーヒー紅茶、ウーロン茶にはシュウ酸が多めに含まれています。別に1日1~2杯の摂取は問題ないですが、大量摂取は控えた方が良いという結論になります。水にはシュウ酸が含まれておらず、麦茶などはほとんど含まれていません。ですので、こういった水分が推奨されています。

食べ物であれば、動物性タンパク質などはシュウ酸が増えやすくなります。いかに焼肉+ビールが尿路キラーであるのかが伺えます。「大丈夫、私はホウレンソウやキャベツ、ブロッコリーが中心のビーガンですので。」という人も、背中バットの危険にさらされています。

ここがまさにピットフォール(カッコつけて言いましたが、落とし穴という意味です)なのですが、ホウレンソウやキャベツ、ブロッコリーにはシュウ酸が多く含まれているのです。幸いにもシュウ酸はお湯に良く溶けるので、茹で野菜摂取は問題ないのですが、生ホウレンソウスムージー等は、背中バットです。

他にも、バナナやチョコレート、ナッツ等にもたくさん含まれていますので、朝はホウレンソウスムージー、昼には高カカオチョコレートにコーヒー、夕はナッツをお供にオシャレなお酒を飲むような意識高い系生活者がいたとすれば、その人は大谷背中バットとなるわけです。

「じゃあ、カルシウムも摂っちゃダメじゃん!」という意見をもつ人がいたとすれば、それは鋭い指摘です。ですが、結論から申し上げると、カルシウムは摂った方が良いです。通常、胃腸の中でカルシウムとシュウ酸が出会うと結合してそのまま便として排泄されます。一方、カルシウムの摂取が不足している人ではシュウ酸が胃腸で結合する相手が見つからず、結果として体内に吸収されてしまうのです。

小さな子供が眠る前に水やお茶を飲みたがる事があります。子供は代謝が活発ですので、布団で温まると口喝が強くでる事があるためです。しかしそれだけではなく、「分離不安」という症状のために水を飲みたがる事があります。睡眠とは一人の世界に入る事を意味しており、小さなかお子さんはこれに不安を覚え、もうあと少し親と一緒に過ごしたいときに、水を飲ませてもらおうとするのですね。

尿の濃縮は主に寝ている最中ですので、この「眠る前の水分1杯」は、尿路結石発症予防にとても有効な手段なのです。カルシウムとシュウ酸の結合不安がある方は、是非とも寝る前に1杯どうぞ。

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