2025年11月26日

「癌(がん)」という病名を知らぬ人は少ないと思います。診断されると、とても精神的にショックをうけてしまいそうな、なんとなく心細くなるような、そういった印象が私にはあります。
どんな病気にだって乗り越える“治療”や、ともに生きていく“管理”とよばれる対応があります。その中でも癌は特に「生存率」や「死亡率」とった話とセットで議論される事も多く、ここがなんとなく堅苦しくて、いかにも「ザ・病気」という印象をもちやすくしているのかもしれません。「癌」よりも「がん」と書いたほうが、すこし堅苦しさもとれそうなので、そのようにしましょう。
日本人の死因TOP3は2024年時点では1位 がん、2位 心臓病、3位 老衰です。がんによる死亡は全体の23.9%にあたるので、亡くなった方の4~5人に1人の死因であるという事になります。
診断される割合になるともっと多くなり、一生のうちにがんと診断される確率(2021年データ)は男性で63.3%、女性で50.8%らしいです。がんによる死亡確率を性別で分けて見てみると、男性 24.7%、女性 17.2%となっています(2023年データ)。
男性ががんになりやすいし、がんで亡くなりやすいのであれば、さぞ男性特有の臓器はがんになりやすく、死亡率にも関係しているのでしょう、と考えがちです。実際、男性で診断されるがんの部位別ラインキングでは断トツ1位は前立腺がんです。ですが、がんの部位別死亡率になると1位 肺がん、2位 大腸がん、3位 胃がんであり、前立腺がんはTOP5にも入っていません。
なぜ前立腺がんの罹患率と死亡率がこうもかけ離れるのか。これは前立腺がんの特徴や医学の進歩に答えがあります。前立腺がんは例外を除けば進行があまり早くありません。しかも、その他のがんに比べて早期発見がしやすく、有効な治療も確率されているのです。これはなんともうれしい、朗報です。
つまり、男性の6割が一生に1度はがんと言われ、一番診断されやすいのが前立腺がんなんですが、早めに診断されてしまえば基本的にやりようがあるという事になります。
前立腺をよく知らない以前の私は、「いつか肥大したり、いつか”がん”になったりする、いけ好かない奴」と勝手に決めつけていました。ですが、彼の人柄(「臓器柄」と言うべきでしょうか)は、余裕をもった対処ができる、なんとも落ち着いている大人だった様です。
こうなってくると「前立腺」という名前も心なしかカッコよく感じてくるわけで、「前に立つ」なんて、いかにも男らしいネーミングですし、前立腺の機能も「精子の保護」ですので、子供を守るガーディアンのような紳士であったと気づかされます。
前立腺がんの評価として実施される血液検査はPSA測定と呼ばれます。これはとても特異性が高い検査です。特異性とはそのものだけが持つ特別な性質や特徴の事を指しますので、がん以外にも肥大や炎症といった前立腺の問題が起こった時でもPSAは上昇し、不調のサインを教えてくれます。この「検査が明確」というところが、前立腺の正直者な性格が出ているのだと思います。
こんなに性根の良い彼が、すき好んで肥大したり、がん化しているとは思えません。きっと彼もまた、同じように悩んでいる事でしょう。PSAを検査し、彼の悩みを早くに聞いてあげようではありませんか。
前立腺がんは加齢とともに罹患率が上昇します。検診では50歳以上ですと実施され、家族歴があると40歳代からの検査も勧められています。当院では副院長が泌尿器科医であり、前立腺がんを含めた泌尿器科診療ができます。尿が出にくい・頻尿になったなどの悩みがあれば、よい機会ですので相談にいらっしゃってください。