2025年11月13日

皆様こんにちは。
にじいろファミリークリニックの安田幸一です。
高血圧という病気は、本当に多くの方がお持ちです。
血圧はそもそも高くても大半の方に症状がありません。このため、通常の病気のように「困っているから直しましょう」という事ではなく、「将来の自分が困らないように、今から適切な管理をしましょう」という意気込みが必要になります。
「自分にとって調子の良い血圧は、だいたいコレくらい」というお話を聞くこともあります。ですが「高い血圧が下がるとちょっと踏ん張りが効かない」という事と、「血圧を適正に管理して病気を防ぎましょう」という事は、論点が違いますので、本人の経過を確かめながら徐々にでも適正範囲に近づけていく努力が大切です。
高いほうの血圧(収縮期血圧)を10mmHg下げると脳卒中・心臓病のリスクが2割改善します。不思議と、こういった具体的な数字でお話をすると、急に現実的な感じがします。2割というのが、妙にお得感があって、頑張る気持ちが湧いてきます。
大昔、私たちの先祖は海で生活していました(らしいです)。海底火山からの塩素と岩石に含まれる鉱物のナトリウムが反応すると塩化ナトリウムと呼ばれる「塩」になるので、昔も今と同じように海水はしょっぱい塩水です(らしいです)。
あまりにもしょっぱいと体の中がおかしくなっちゃうので、海の生物には体内の塩分を外に排出するためのシステムが備わっています。
だんだんと太古の海が混みあってきたある時、私たちの先祖は進化して陸へと上がる事にしました。ですが陸地では次いつ水にありつけるかわからないので、「どうにかして海水を持ち歩きたいなあ」と考えました(だと思います)。
結果として、いつも塩分を体外に出しているシステムをひっくり返して、塩分を体内に取り込むシステムへと応用しました。塩分が体にとどまると、同じように水分も体にとどまろうとします。体内の塩分濃度が高いと、これを薄めようとして水が集まるんですね。こうやって、何とか体内に塩分と水分をとどめられるようになったので、陸地での生活が可能となりました(らしいです)。
これ実は、今も私たちの体に残っているシステムなんです。なので、摂取した塩分は体に残って血圧は上がってしまうし、しょっぱいものを食べると翌朝には顔がむくんだりもします。
心臓病では高血圧やむくみが大敵といえますので、つかう薬も塩分排泄を促進したり塩分再吸収を抑制したりする薬だったりします。
環境に順応して生きていくために必要だったシステムが、今や生活習慣病の原因となり、生きていく事への不都合となっている、という点は興味深く考えさせられるところです。
血圧が上がる仕組みはドラマチックだと思いますが、高血圧は万病のもとですのでやはり見過ごせません。自覚症状がほとんど無いという点でも、高血圧はなんて卑怯な奴なんだ、と思います。重大な病気になってからようやく自覚症状が出る点でも、高血圧はなんと姑息な奴なんだ、と腹が立ってきます。次はどうにか、血圧が高すぎると自覚症状くらい出るように進化できないでしょうか。
2025年には血圧管理の指標が新たに改定されました。
血圧が高いだけ、と感じているときこそ予防を始めるベストタイミングです。一緒に相談しながら管理していきましょう。