「空を見ろ!」「鳥だ!」「飛行機だ!」「――いや、腎臓だ!」|にじいろファミリークリニック|東村山市久米川町の内科・循環器内科・泌尿器科

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「空を見ろ!」「鳥だ!」「飛行機だ!」「――いや、腎臓だ!」

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2026年1月06日

「空を見ろ!」「鳥だ!」「飛行機だ!」「――いや、腎臓だ!」

こんにちは。

にじいろファミリークリニック、安田です。

当院では泌尿器科を担当する副院長のもとへ、排尿や尿検査異常に関する相談で来院される方が多くおられます。

排尿に関する問題は、生活の質を脅かすゆゆしき問題です。どこへ行くにしてもトイレを気にする生活というのは、相当な気苦労があるはずです。

一方、尿検査異常ではさほど自覚症状がありません。ですが、自覚症状がないっていうのも、なんとなく不気味で、かえって恐ろしくも感じます。目に見て分かる赤い尿は「肉眼的血尿」と言われ、これはこれでびっくりしますが、体調不良の知らせとしては分かりやすいとも言えます。ですが見た目は普通でも血液が混ざっている「顕微鏡的血尿」は、「え!いつから?」というドキッとする印象があります。

血液の成分として出るのは赤血球という赤い玉っころです。脱核(DNAが含まれる核が抜けている)の影響で中央がくぼんでおり、赤い白玉もちのような形をしています。玉っころそのものはとても小さいので、例えば膀胱や尿管といった場所からの血尿ではそのままの赤血球が出てきます。

しかし、腎臓の内部にある「糸球体:しきゅうたい」という所からの出血の場合、玉っころの形が変わってきます。糸球体は言葉のごとく、毛糸玉のように小さな血管がこんがらがったような見た目をしています。この糸球体では、流れ込む血液から尿の元(原尿と言います)が作られ、この原尿が細長い「尿細管」という管を通りながらだんだんと尿になっていきます。糸球体から出血すると、玉っころが尿細管を通りますので、細い通路を進むうちに形が変わってしまうのです。また、尿細管の中で他のたんぱく質とくっつくと、内部でトコロテンのように固まって、細長い塊のまま尿に出る事があります(目には見えません)。このトコロテン的なものを「赤血球円柱」と呼びます。

ですので、おおむね血尿の状態や他の成分(円柱など)をみれば、「これは腎臓からきているなあ」とか、「これは膀胱からきているかも」とかを予想できる、という事です。

腎臓はだいたい握りこぶしくらいの大きさで、腰くらいの場所にあります。同時に、アメコミでおなじみのスーパーマンは、両手でグーを握って腰に当てています。

そうです。つまり、スーパーマンは腎臓のモノマネをしている、という事になります(おそらくです)。実際のところスーパーマンと腎臓には数多くの共通点があります。

スーパーマンは弾丸を跳ね返す強力な力を有し、空気を圧縮して超音速の息を吐くスーパーブレスが可能です。腎臓は老廃物や水分・塩分の管理を行っていますが、この過程で尿を100倍に濃縮しています。1日1.5~2リットル程度の尿が出ますが、これは150~200リットルの原尿を濃縮したものです。これは、スーパー尿濃縮と言っても過言ではありません。

また、スーパーマンにはスーパー動体視力・透視能力があり、弾丸を見切る事ができます。腎臓は、150~200リットルの原尿から、必要な栄養素やミネラルを瞬時に見切り、再吸収しています。これはもはやスーパー再吸収です。

スーパーマンは目や口から熱線や凍結息を放つ事ができます。腎臓も、血圧や血液濃度を調節するためのホルモンを放つ事ができます。スーパーマンは重力を操作して飛行していますが、腎臓はビタミンDを活性化させて骨を丈夫にする事で羽の生えたような歩行を可能にしてくれています。

腎臓のスーパー尿濃縮は「対向流増幅系」というカッコイイ感じのシステムで行われています。腎臓では原尿から栄養素を吸収して、その後に水分を吸収して、今度はミネラルを吸収して、最後にもう一回水分を吸収するという流れ作業が行われているのですが、自分で吸収したミネラルを利用してこの作業をめっちゃ効率よくする事を「対向流増幅系」と言います。自分で自分の作業を効率化するというのは、だいぶ仕事がデキる人のやり方ですので、「あの人は腎臓みたいね」と言えば、もうそれは褒め言葉以外の何物でもありません。

当然こんなに働くものですから、必要なエネルギーも多く、臓器重量に対する必要エネルギー量は脳の倍ほどあります(腎臓:440 kcal/kg/日 vs 脳:240 kcal/kg/日)。

頑張っている臓器ほどなかなか自覚症状が出にくいという内臓界隈のあるある話がありますが、腎臓もいわゆる「沈黙の臓器」と言われています。つまり、寡黙でよく食べよく働く、腎臓とはまさに職人気質な臓器なのです。性格の点ではクラーク・ケントに勝っているという見方も出来ます。

スーパーマンは大切な人を救えなかった時、自分の無力感から涙を流す事があります。腎臓は不調の時、そっと赤い涙を流します。これが顕微鏡的血尿の正体なのでしょう(個人的見解です)。放置するわけにはいけませんね。

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