2025年12月10日

こんにちは。にじいろファミリークリニック、安田です。
今の時期ですと、冷えの影響でトイレが近くなる人はすくなくないのではなかろうか、と思います。
人間の体は寒冷の刺激をうけると、血管が収縮します。血管が縮まると血管の総面積が減少し、熱の放射が減りますので、これによって体温が逃げにくくなります。
こうやって手先・足先を中心に血管がギューッとしまると、血液は体の中心にあつまる事になりますので、当然腎臓へ流れる血液量も増え、尿の産生量が増えてトイレに行きたくなります。
「まあなるほどね」というお気持ち、お察しします。「まあ、寒いとトイレに行きたくなるのは分かるんだけどね」というご意見、ごもっともです。
スマートフォンが突然「残り3%」と言われたら、「なんだとー!」と思いますし、車の燃料タンクが突然残り1メーターになったら、「そんなバカな!」ってなるのが、いわゆる普通の感覚です。つまりは、「急にトイレに行きたくなってしまう」っていうのが、尿意事情を理解しつつも、膀胱に対してなんとなく納得いかないような、そんなイメージを持たせてしまうのかもしれません。
これは言い訳がましいのですが、実際のところ、膀胱の尿意を感じるという神経的な機能の全容は未だに解明されていません。謎の残るミステリードームですが、影ながら私たちを多方面で支えてきてくれた膀胱でもあります。今回は膀胱の功績を一部紹介しましょう。
そもそも、海中にいた我々の祖先は膀胱を要しませんでした。というのも、別にためる必要がなかったためです。ですがひとたび陸地に上がれば、尿は自分の存在を他へ知らしめてしまうものにもなりました。動物はこれをマーキングとして利用する場面もありますが、寝込みを狂暴な動物に襲われれば大変です。尿が溜まらずに常に出てしまうとヘンゼルとグレーテルでいうところの”パン”のような目印になってしまうので、膀胱が発達してくれたという事です。
膀胱は尿をためるという本来の目的以外にも、私たちの生活を豊かにしてくれています。例えば昔ラグビーに使用されていたボールは空気を入れたブタの膀胱でしたので、つまりは膀胱がなければ五郎丸選手やリーチマイケル選手もあんなに有名になっていなかったかもしれないのです。
サッカーボールも、膨らませた膀胱を牛の革で包んで作ったものが始まりですので、やはり膀胱がなければFIFAワールドカップでスポーツバーが賑わう事もなかったのでしょう。
スコットランドでスカートのようなキルトを腰に纏って吹いている楽器はバグパイプと言いますが、これも当初は膀胱が使われていました。また、大昔は建物の材料(窓枠)へも膀胱が利用されています。
腎臓や前立腺をつかってスポーツをしようと思った人も、音を奏でてみようと思った人も、きっといません。当時の人に「あ、これは膀胱の出番だぞ!」と思わせる力が、彼にはあったのです。
エジプトのミイラには膀胱結石(膀胱に石が出来る病気)の手術痕が残っています。動物性たんぱく質の摂取が多く、暑い気候で尿が濃縮しやすい当時のエジプト人では膀胱結石が多く、恐れられていたようです。この膀胱結石の手術は、人類最古の手術と言われておりますので、ここから手術医学が進歩したとも言えます。現代でも膀胱は再生医療へと利用されており、まさに医学とは膀胱学と言ってよいのです(言いすぎました)。
膀胱の下側、もし膀胱がオムツを履いていたら、きっとコットンが当たっているであろうところに、「膀胱三角部」とよばれる場所があります。左右の尿管口と膀胱出口を結んだ三角形です。
おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、オリオン座のベテルギウスを結んだ三角形は「冬の大三角」と呼ばれ、冬空の目印です。ピラミッドはパワースポットですし、おにぎりは国民食です(“俵おにぎり派”の人に関しては、申し訳ないと思って書いています)。ですから、膀胱三角部だって、だれが見ても一目瞭然、きっと何かのパワースポットだと直感するのです。
この三角形に、感覚神経が網のように張り巡らされており、尿意中枢となっています。岡山大学が研究するこの内容が米国誌「Cureus」に掲載されたのは、意外にも2025年10月19日とかなり最近の出来事です。つまり、今後ますます発見がなされていく可能性がある分野であり、もっと研究が進めば尿意そのものに介入できる日が来るのかもしれません。
冬空を仰いだ時、TVでスポーツ観戦をした時、バグパイプの音を耳にした時、是非とも皆さん、そっと下腹を撫でてあげてください。ただし頻尿や尿漏れでお困りの際は、当院泌尿器科にご相談ください。