息苦しい・疲れやすさの原因

「息苦しい」「疲れやすい」といった症状は、循環器内科でよくご相談いただく内容の一つです。心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を果たしており、その機能に障害が生じると、酸素の供給不足や肺の機能障害、血液循環不全などを引き起こし、身体に様々な負担がかかります。心臓の機能障害が悪化していくと症状は簡単に出現し、なかなか改善しないようになってきます。軽い動作で息切れがする、休んでも疲労感が抜けないといった症状は、心臓に関わる病気のサインかもしれません。

息苦しさ・疲れやすさを引き起こす疾患

心不全（急性・慢性）

心臓のポンプ機能が低下することで全身に十分な血液が送れなくなる状態を心不全といいます。心不全の影響で肺に血液がうっ滞すると呼吸困難や起座呼吸（横になると息苦しさを感じ、上半身を起こすと症状が軽くなる状態）が生じます。また全身への血流が不十分になると倦怠感やむくみ、食欲低下（胃腸がむくむことで消化不良などの症状が生じるため）といった症状が出現することもあります。急性心不全の場合は突然の呼吸困難や咳が現れ、慢性心不全の場合では階段や坂道での息切れ、日常動作の疲労感として現れることがあり、気になる症状が出れば心不全や心不全原因となる病気の検査を行います。

虚血性心疾患（狭心症・心筋梗塞）

心臓組織へと栄養や酸素を送る血管は冠動脈と呼ばれます。この冠動脈の動脈硬化によって血流不足が生じ、心臓の必要とする血液量と送られる血液量にアンバランスが生じて障害がおこる病気が虚血性心疾患です。狭心症や心筋梗塞は虚血性心疾患に含まれます。典型的な症状は胸痛ですが、虚血性心疾患が悪化する前兆として労作時の息切れや疲労感、動悸などが現れることがあります。また、神経障害がおこることで痛みを感じにくくなるような糖尿病や高齢者・女性の患者様では虚血性心疾患を罹患しても痛みを感じない無症候性虚血とよばれる病態で進行することがあります。

心臓弁膜症（大動脈弁狭窄症・僧帽弁閉鎖不全症など）

心臓に流れ込んだ血液が正しい方向に流れることをサポートするための弁が心臓弁膜です。心臓弁膜に異常があると、血流がスムーズに流れず、心臓に過度な負担がかかります。この結果、動悸や浮腫み、息切れ、つかれやすさ、倦怠感を引き起こします。弁膜症が進行すると失神や突然死を引き起こすものもあります。

不整脈

心臓のリズムが乱れると、全身への血液供給が不安定になり、息切れや疲れやすさが出現します。特に罹患数のおおい心房細動では、心臓の不規則な脈によって安静時でも動悸・息苦しさを感じ、脳卒中のリスクもあるため、適切な診断と治療が必要です。

心筋症（拡散型・肥大型など）

心筋の構造や機能が異常をきたす疾患です。心筋の収縮・拡張が障害されることで、息切れや疲労感、めまいや体の浮腫みといった症状が出現します。若年〜中年層でも発症し、進行すると心不全へ移行する場合があります。

検査・対処法

息切れや疲れやすさの背景に循環器疾患が疑われる場合は、以下のような検査が行われます。

心電図検査	不整脈や虚血性変化の確認
心エコー検査	心臓の構造・弁・ポンプ機能の評価
胸部レントゲン	心肥大や肺うっ血の確認
血液検査（BNP、心筋マーカーなど）	心不全や心筋障害の評価
運動負荷試験・ホルター心電図	労作時の異常の確認

症状がある方は、放置せず早めに受診することが大切です。疲れやすさや息苦しさは、加齢や体力の低下だけが原因とは限らず、心臓病の初期サインである可能性もあります。